八百亀
亀に人生丸呑みされた 不良品主婦wachizoの 亀グッズ製作録&日々のこぼれ話
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漱石先生ごめんなさい6
−6−
この家に暮す亀は、我輩とアカミミガメ科のお嬢さん方だけではない。
遥か西方より来たという亀が2匹、2階の一室で暮らしている。
倫太郎と七海嬢である。
両名は我輩の様に水中ではなく陸地に生息する種類であるそうだ。
やたら暖めた部屋で暮らしており、菜っ葉ばかりをモサモサ食している。
我輩から見れば変わり者であるが、我等亀族は実に多種多様に構成されているものらしい。
聞くところによると、広い海洋をゆったりと泳ぐ者もいるのだとか。
一度なりとも会ってみたいものである。
籠の亀のそのような儚い望みはさておき、
我輩が「プリズン」ではなく2階に置いた水桶で生活していた8年ほど前のこと、
その変わり者の亀と生まれて初めて邂逅した。
水桶から出された我輩が、広々した空間と早春の陽射しを堪能していたところ、
「ハイ、倫太郎君でーす。」
派手な模様の亀が1m程離れた処に現れた。
盛り上がった黒光りする甲羅に黄色の線が稲妻の如く縦横に走っている。
何者かと不審に思っていると、向うも此方を見つけたもので、尾を振り振り近づいて来た。
なんとも積極的である。
見知らぬ輩の積極的行動に対し、我輩一先ず距離を置くことといたした。
君子危うきに近寄らずである。
ところが、彼奴の方は此方の気持ちなど一向構う気などないようで、
我輩が遠退けば遠退くほどに勢いを増して迫って来るのだった。
それに何やら妙な空気を身に纏っているのである。
本能的恐怖に押された我輩は死に物狂いで走り回った。
亀を鈍間と思うなかれ。
こういう時の亀は存外早いのである。
それでもとうとう壁際に追詰められてしまった。
もし我輩に汗腺なるものが存在するならば、たらりたらりと脂汗が出ていたに違いなかろう。
あわや我輩の甲羅尻に彼奴の前足が掛かるという段になって、
「倫太郎、ヤオは雄なの。何誤解してんのよぉ。馬鹿だなぁ、お前達。」
先程からこの逃走劇を脂下がって見ていたに相違ない暴君が、
彼奴を掴み上げて、ハハハハと笑ったのであった。
此方が心に嫌な汗を沢山かいているというのに高笑いとは、
まったくデリカシーの欠片も持ち合せておらぬ人間である。
第一、我輩は誤解などしておらぬのであって、馬鹿呼ばわりされる覚えなどないのだ。
このようなガサツ人を妻に持つ主人に対し、深い同情を禁じえない。
その後、七海嬢が輿入れした為、我輩がかような目にあう事は起きていない。
彼奴め、己が本分を知ったのであろうと思う。
| 2009-07-14 |
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